大量創作、大量消費

ぼく、創作のなんなのさ

今日から地球人 / マット・ヘイグ

f:id:rabbitof16bit:20151214020709j:plain

 

表紙と帯の煽り文に惹かれて購入。何やら賞を取っていたり映画化が決定していたりする………のは後から知った。

 

 

役者があとがきで言っているように、この本はいったい何なのだ?(いい意味で)という感じが強い。

宇宙人が主人公で"星主"やら超能力という要素やらがあるからSFか?それとも地球の風習に慣れず素っ頓狂な行動を繰り返す宇宙人を笑うコメディか?それとも主人公と家族の絆の復活(?)を描いたドラマか?それとも上から下されるミッションをこなすサスペンスか?いやいやミステリーの賞にノミネートされたのだからミステリーだろう。

色々な要素が詰まっている物語であるが、その答えは冒頭に載っている。

この書、この本物の書は、ここ地球を舞台にしている。これは人生の意義と、まったくの無についての書。誰かを殺すために必要なものと、救うのに必要なものについての書だ。愛と、今は亡き詩人たちと、ホールナット・ピーナッツバターについての書。物質と反物質、一切と無、希望と憎しみについての書。イゾベルという41歳の女性歴史学者と、ガリヴァーという15歳のその息子、それに世界一優秀な数学者についての書。ひとことで言うなら、人間になる方法についての書だ。

この部分に要素が集約されている。

 

宇宙人が人間に扮して地球にやってきて……というのはお決まりのパターン(らしい)

地球にやって来てすぐの「私」がおかしな行動をしている様は笑えた。

始めは人間が理解できず、その醜悪さに気持ち悪さを覚えていた主人公が、家族や人間たち、犬や詩や音楽に触れて人間に感化されて、最後には人間として生きることを決めてしまうのだから驚き。始めは故郷の色「すみれ色」を懐かしがっていた主人公が、終盤では「すみれ色」を見るのすら嫌になったのが象徴的。

 

主人公が元の人物と入れ替わる前、ほとんど崩壊していた家族が、「家族を壊そう」と思ってやってきた主人公のおかげで纏まるのは面白い。

個人的に息子くんのキャラクターがとても好きでそこらへんでも楽しかったです、はい

 

主人公が感化されてきた辺りからの文章がいい。

冷静冷淡な語り口から見える人間の奇妙さ、可笑しさ、矛盾。美しさ、愛おしさ、愉快さ。うわぁ人間って愛おしいなあ!と思える。

人間賛歌ってやつですかね。

終盤に任務を放棄した主人公の代わりにやってきた「代行人」と人間について語るシーンは主人公の変貌っぷりに感動さえ覚えた。

 

翻訳ものにしては頭にすんなりと入ってくる文章で、役者さんってスゲーーーッってなった(語彙)

ヤングアダルトや児童書を書いていた作者だから、原文からして分かりやすいものだったのかも…しれない

 

この本は社会と人間に疲れた大人のための本、という感じがする。

人間として生きてやるのも悪くねえな、と思える良い書でした。