大量創作、大量消費

ぼく、創作のなんなのさ

卵をめぐる祖父の戦争 / デイヴィッド・ベニオフ

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どうもお久しぶりです。

記事を更新しない間も、多少は本を読んではいたのですが、中々感想をまとめて書こう、という気になる作品に巡り会いませんでした……(主に積みラノベを消化していたからではないだろうか…?)

 

『卵をめぐる祖父の戦争(原題City of Thieves)』

いやあ…良かった。後読感が凄く良い。今まで読んできた本の中で一番と言っていい後読感。本気で「終わらないでくれ!」と思いながらページを進めたのは初めてだ…

読み終わった後はため息しか出ないし、好きなシーンを何度も読み返してしまった。

ラストにうちひしがれてしばらく頭が回らず、一日経ってやっと感想が書ける状態になったほど(笑)

 

ネタバレはしないよう注意しましたが、用心して具体的な感想は続きから。

 

 

脚本家の「私」が、祖父に「人を二人殺した」ときの話を聞きに行く、という形で物語は始まる。

舞台は戦時中、ドイツ軍に包囲されたレニングラード。有名な「レニングラード包囲戦」の真っただ中。死んだドイツ兵の持ち物を盗んだことで捕まった「わし」ことレフと、同じく脱走兵として捕まった青年コーリャが秘密警察の大佐に命じられ、卵を一ダース探す旅に出る………

 

読んでしばらく考えた後の感想としては、「とても映画的な小説だったなあ」ということだ。

著者が映画の脚本等を手掛けている映画畑出身なだけあって、随所に映画的な演出がほどこされていた。陽気な女好きの青年と真面目で陰気ぎみな主人公二人組、というだけで映画でよく見る形であるし、新しい人物の登場の仕方、ラスボス的位置づけの人物とラスボス戦的シーンの存在、ラストシーン直前に主人公二人が少し先の未来を夢想する会話などなど………映画好きの自分としては、もう、たまりませんでしたね…

というか最後の一行を読んだ瞬間、目の前にエンドロールが流れ出しましたからね?!??!?スタンディングオベーションしたくなりましたからね??!?!!?!

いちいち絵になるシーンばかりで、ほんと、あの、映画化しましょう(懇願)

 

無知なため、レニングラード包囲戦についてはこの小説で初めて知ったのだが当時の戦争の状況をこれでもか、と描写してくれた。

ただ、わりと残酷で凄惨な描写が多いにも関わらず、あまりシリアスに物語が進まないのが印象的であった。どちらかと言えば戦争とそれを起こす人間の愚かしさを描いていた感が…

包囲され食料は少なく人食いまで出ている状況で「大佐の娘のウェディングケーキために卵を探す」という物語の始まりからして皮肉なものですしね……

終盤は色々と無情感がある描写が続いて、それが良い後読感になったのではないかと思う。

 

レフとコーリャの軽妙な掛け合いがとても面白く、それが辛い状況ばかりであるはずの旅を明るくしていた。

コーリャがこれまた魅力的なキャラクターで、彼の下ネタ満載の軽口が心地よい。身体的にも精神的にも辛い状況にありながら、レフに軽口を叩ける彼の強さがよい。

コーリャの一方的な話を無視したりあしらったりしているようで、ちゃんと聞いて相槌を打ってくれるレフの暖かさよ……

17歳と20歳ということで、女性関係やら下ネタやらのくだらない話ばかりなのだが、それが本当に面白い。

「あんたたち茂みでファックでもしたら?」「今すぐ裸になって抱き合えば?」というヴィカのオチまでつくのだから最高。

二人が小説『中庭の猟犬』について話しているシーンは良かった。コーリャがとても嬉しそうに話しているのが…とても…よかった…(オタク女並の感想)

 

主人公が17という多感な時期だけあって、少年の目線から上手く戦争の状況やら女性やらを描けていたなあと思う。女好きのコーリャが居るものだから、17歳チェリーの彼のもんもんが良く伝わってきましたね…

 

ミステリとして売り出されていたようだが、ミステリ要素が全く無い。

どちらかと言えば戦争小説のような気がする…かなりエンタメ色が強いし、ミステリと銘打って敷居を上げてしまうのは勿体ない

邦題の方が物語を端的に表していて良いと思うのだが、個人的に海外版は表紙がとても好きです。よい…

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この物語は、レフの戦争体験記であり、青春記でもあるのだろう。

きっと彼にコーリャ以上の親友はできなかったであろうし、この五日間の旅以上の体験は無かったのだろうなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直なところ、女オタクとしてはコーリャとレフの掛け合いと性格の組み合わせが本当にツボで感謝しかない…………あの会話に萌えない女オタクは居ないと思いますよ……コーリャとレフについて滅茶苦茶語りたいのですが、ここでは駄目だと思うので割愛します……

ただ、レフはコーリャに劣等感と憧れを抱いていたことは確実ですね…ええ……