大量創作、大量消費

ぼく、創作のなんなのさ

子どもたちは狼のように吠える1,2 /地元草子 感想

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書店で見かけて表紙に惹かれて衝動的に買ってしまった作品…

近未来の樺太を子どもたちが生き抜くノワール青春記。

 

 

■ストーリーの話

一巻。本土へ出ることを夢見ていた14歳の少年、セナが堕ちてゆくまで。

凄惨な現実、大人からの理不尽をこれでもかというほど突き付けてくる。登場人物がどんどん死んでゆく…明日はどうなるかも分からない毎日を子どもたちが生きていく。

 

"学校"の話が私的にとても好きなんですよ…

学校で出会ったニカというロシア人の少年との出会いがとても良い。お互いに信用しきっていないのですが、学校から脱出し生きるために利用し合っている感じ…

首筋に埋め込まれた機械をメスで取り出すシーンが象徴的。他人に自分の身体に刃を入れさせるなんて"普通"ならできないはずなのだが、状況が二人にそうさせている…

あと、脱出して逃走するシーン。先の見えないただっ広い牧草地をぼろぼろの二人が歩いていくところ…個人的にツボなんですよこういうシチュエーション…

 

妹の安否を確かめるためにクラキと会う所の美しさよ…

積もった雪と、それに滲む血。さっきまでの銃撃戦の喧騒が嘘みたいに、音が雪に吸い込まれ静寂に包まれる…絶望感も相まって印象に残る。

 

二巻。読了後の喪失感がすごかった…胸に穴が開いたようだった…マジで…

結末がこうなることはなんとなく分かってはいたが、エピローグのニコラスのシーンは卑怯。ネバーランドは子どもたちの楽園だからね、そこで幸せに生きて欲しいと切に思う…(号泣)

 

改めて思っても二巻は卑怯な作りが多かったなあ…個人的にベタと言われる表現手法?を出されるとやられた!!と頭を抱えてしまって駄目なんですよ……

「この仕事が成功して金が入ったらどうする?」から始まる、マカロフでこれからの夢を語るシーン…俗に言う死亡フラグというやつなのですが、これから悲惨なことが起こる人物が、未来の夢について語るシーン大好きなんですよ……ほんと……

あと最終決戦で各人を活躍させる所とか、ピンチのキャラがここには居ない人物の幻想を見て立ち直る所とか……

 

 

通して読んで思ったのが、一貫して彼らは子どもだったのではないかと思う。

一巻は大人からの理不尽に合いながら泥を啜ってでも生きる子どもたち、という面が強いように感じられた。二巻は四年後で(19歳という子どもと大人の宙ぶらりんな年齢も卑怯)、組織を大きくしてある程度自由に動けるようになったとはいえ、子どもは子ども…

 

「……貴様、自分が何をしたのか分かっているのか?」

「ええ、分からないわけがない。ピオネールのガキじゃあるまい、自分のしていることの結果くらい想像できますよ」

 

という、オオガマとコトヒラの会話につきると思う。

"大人"は自分の行動の結果を考えた上で行動できる。先のことを見通して計画を立てて計画通りに事を進める。

子どもたちはそれができなかった。子どもたちは弱い存在だから、今を生き抜くこと、目の前の問題を処理することに必死で、先のことなど考えられない。行き当たりばったりと言ってしまえばそれまでだが…

一巻の"学校"から逃げた後どうするかは分かっていないが、生き延びるために逃げる。それが永遠に続いているような……

「この仕事が成功して金が入ったらどうする?」という会話もそうだ。子どもらしい、子どもの夢。

 

 

■キャラクターについて

キャラクターと、その組み合わせがとても好みで会話を一つ読むたびにぎえーって言っていた……女オタク的な萌えという話ではないです……映画でもあるでしょう、会話一言一言がセンスに溢れていてその魅力で震える感じ…カサブランカとかさ…

 

セナ。彼の今を生きる意志に溢れているところと、正義感が(かろうじて)残っているところがTHE主人公という感じで大好きですね……一巻時点だと、まだ罪を重ねることに罪悪感を覚えていた彼が、二巻で人を殺すことにためらいが無くなってしまったのがかなり衝撃。嫌がっていた煙草も吸っているし(表紙絵だけか?)

 

ニカ。彼のニヒルに笑いながら一線をあっさり超えてしまう所がかなり魅力的だ。飄々としている彼が絶望に突き落とされるときの魅力は計り知れない……学校での拷問シーンで叔父さんの現在を知らされて絶叫するところとか、二巻のリサがフラッシュバックしてしまうところとか……クソオタクなのでここを語ると面倒くさい話をしだすのでこれ以上は割愛。

 

陰気ぎみの黒髪と飄々とする白髪(口が悪い)の二人が泥を吸って生きる物語が大好きなんですよ……"学校"の時点ではまだ互いに利用してやろう、というところがあるのだが、逃走劇を得てかなり二人の仲が深まったような……命を助けられた、というところに恩義を感じたのか…

四年後には二人が本物の「兄弟」と言っても言っていいほど信頼し合っているのがいいなあ…最終決戦の背中合わせで戦うところなんかね、後ろ手にマガジンを渡すところなんてもうね、最高かと、

一巻の、ギリギリのラインで堕ちきっていないセナと、あっさりそれを越えるニカという対比がとても好きだ…上でも書いたが、セナが堕ちていく過程見たいなあ…空白の四年間……

 

中国人移民の王兄妹も好きです…中国人キャラが素が出たときにポロッと中国語が出たり、信頼する相手には中国語で話すのが好きなので、鈴華の「哥哥」呼びはたまりませんでしたね……彼らの殺しの哲学も格好よすぎる。

 

 

 

気になったのがニカの描写。

一巻ラストの「…大丈夫だ、心配いらない」からのシーンの人を殺すことより、今後の手順を心配している異常さや、イカルバの思わせぶりな「ニカさんを頼んだぞ……セナ」という台詞、二巻で度々出てくるリサの幻影に苦しめられるところとか……

書ききれなかったのか…?リサはニカの罪の意識の表れだと思ってしまえばそれまでなんだろうが、身動きができなくなるまでに彼に影響を与える存在を克服しないで終わってしまったのだけな……

セナの堕ちていく過程と一緒に補完お願いします!お願いします!!

続編来るまでとりあえずマカロフのモデルガン買って愛でてますね……!!

 

全て読んで改めて思ったのが、このお話はセナとニカの生きた四年間だろう…泥と血にまみれ、雪に凍えてでも生きていくんだ……

彼らの汚れちまった青春。必死だった青春。